2009年6月24日水曜日

アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡 (アスキー新書

アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡 (アスキー新書 035)

「1+1は2じゃなく、3にも4にもなる」とか言われても正直ピンとこなくて、なかなかそんな言葉は信じられない。
でも、物作りにとってそれは間違いなく理想のはずだ。
人と人を結んでプラスアルファを導こうとしている人はこういうことを考えているんだなあ、と納得。
と同時に、秋葉原という街自体を愛している人がいるんだなあ、ということに改めて気づかされる。

2009年6月18日木曜日

あやかしがたり

あやかしがたり (ガガガ文庫 わ 3-1)

丁寧に書けているとは思う。侍のシチュエーションもそれなりに使えていて、妖怪の特色もきちんと出せている。お話もまあそこそこの意外性を出していて悪くはない。
でも欠点がない作品として評価できるかといえば、それもちょっと難しいような気がする。妖怪を倒せばで外的な問題は解決するが、しかし内的なドラマの決着はそれとまた別問題なわけで。
国に平和が戻っても、「主人公がこのストーリーで何を得たのか?」がぼやけてしまっている限り、カタルシスは生まれないんじゃないのかなあ。ふくろうのように、成長しない「キャラクター」が主人公だったらまた別だけどね。

2009年6月17日水曜日

趣都の誕生―萌える都市アキハバラ

趣都の誕生―萌える都市アキハバラ (幻冬舎文庫)

911以来断片的に感じていた世界への違和感が、アキハバラ論を通じてスッと収まるところに収まった感じ。オウムのサティアンに関する言及なんかは、思わず読みながら唸ってしまった。
とはいうものの、今は当時とかなり状況が違っている感じがしており、その意味で文庫化に際して追加された章は興味深い。秋葉原通り魔事件から1年、良い悪いは別として、あの街は時代を映しているんだなあ、と思った。

日本のいちばん長い日

日本のいちばん長い日 [DVD]

噂に違わぬ傑作。
あまりに創作っぽい出来事の連続に、映画を見終えてからWikipediaで確認してしまう。学校で習った記憶はないんだけど、まさか終戦記念日にこんなことが本当に起こっていたなんて……事実は小説よりも奇なりというが、まさに地でいっている。
奇妙なほどにクーデター側の主張に熱が入っているのは、単純な善悪の感情で割り切れない、当事者たちの思いが乗り移っているように思えてならなかった。今の時代「私は貝になりたい」をやったところで、きっとあんな切実さは乗り移らないんだろうなあ、と思う。

2009年6月16日火曜日

IS(インフィニット・ストラトス)

IS(インフィニット・ストラトス) (MF文庫J)

ツンデレヒロインを複数用意するなら、ストーリーに絡めてそれぞれの立場の差異を明確化させなきゃ意味がない。「寮の同室」「バトルの師弟」「幼い頃の約束」というそれぞれのヒロインの根っこになるものは、対比されてストーリーにはっきり絡んだ緊張関係を持つべきだ。
ツンデレって性格がメタ化されて読者にも共有されてから、ヒロインがラベリングされただけで満足されてしまうラノベが量産されているような印象がある。本当はその向こう側にあるものを表現されて初めて、愛情を抱けるんだと思うんだけど。貧乳を気にしてるツンデレヒロインが主人公どつくパターンなんて、年に何十冊読んでるだろう? 怒りのあまり撲殺、なんて極北がすでにっていうかだいぶ昔にあるんだから、ツンデレのアクションで主人公災難型で見せようとしたってかなり工夫が必要だ。

あと、主人公が鈍感だが「男の子」にこだわる、というのは懐かしさが裏返って新しいのかもしれないと思ったりする。そんなわきゃないか。でもやるんだったら土壇場でもっと「男の子」するシチュエーションをつくらないとちょっと説得力が足りない。

帝都東京・隠された地下網の秘密〈2〉地下の誕生から「1‐8計画」まで

帝都東京・隠された地下網の秘密〈2〉地下の誕生から「1‐8計画」まで (新潮文庫)

まあ、流石にここまでくると呆れが先に出るなあ。
そういう楽しみ方をするべき本なのだろうけれども、語り口があまりに乱雑で。
陰謀論なら陰謀論らしい楽しみ方がしたかった。

2009年6月11日木曜日

星図詠のリーナ

星図詠のリーナ (一迅社文庫)

キャラ立て、読みやすさ、エピソードのつくり他、手堅くツボを押さえている印象。悪くないが、難点がないわけではない。
最も気になったのは、「地図」という非常に巨視的な題材を、ヒロインの視点から説得力もってストーリーに組み込めてはいないように感じたところ。「地図」は市民の生活に密着するものでもあるが、それよりも国の軍事政策や都市設計といった、個人とは大局的な場所で機能するように思える。ヒロインの庶民視点に地図というギミックを引きつけるには、立て札程度ではちょっと説得力が足りないような印象。
あと、普通に立てられていて悪くはないんだけど、ライトノベルというジャンルからみたとき、本作品のヒロインはちょっと魅力が足りない。『狼と香辛料』なんてラノベにならなそうなテーマの作品をまず引っ張ったのは、間違いなくヒロインの魅力。たとえば弱点をつくるだけで、キャラクターとしての魅力が違ってくると、小池一夫もいっていた。気がする。

消えた魔球―熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか

消えた魔球―熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか (新潮文庫)

魔球カタログというよりも、むしろスポーツマンガ史のアウトラインをなぞりながら、その急所がどこかをなぞるという内容。
時代が進むとともにテーマが変化して、マンガとリアリティ・本気とはぐらかしなどの力関係の間で揺れ動く様が非常にわかりやすく解説されている。
「タッチ」の名言がひどく心に残った。マンガ史の流れを意識したものかどうかは別として、やっぱり名作には時代を象徴する一言があるものなのだなあ、と唸る。

2009年6月10日水曜日

メトロ誕生―地下鉄を拓いた早川徳次と五島慶太の攻防

メトロ誕生―地下鉄を拓いた早川徳次と五島慶太の攻防

正直言うと、色んなところで耳にしながら「幻の新橋駅」がなんでできたのかさっぱり理解していなかったのだが、いやあ、まさかそのバックグラウンドにはこんな話があったなんて。万世橋橋駅や渋谷の謎の地下鉄駅とか、そういう「ぼんやりとした疑問」に当時の鉄道状況も絡めて解答していく様は非常に面白い。のだが、やっぱりこの本の真骨頂は地下鉄創成期の二人の偉人の攻防にあって、特に前半、なんのコネもカネもない状態から地下鉄敷設へとがむしゃらに突き進んでいく早川徳次の行動力には舌を巻く。いやあ、すげえひとがいたんだなあ。

スメラギの国

スメラギの国

視点を分けたことで猫と人間両者の視点のすれ違いがストーリーの肝になるのかと思ったが、上手く機能していないように感じた。ラストの精神感応が救いになってしまっているあたりは最悪で、あそこは両者が取り返しのつかない自分の罪に愕然としつつ、それでも殺し合いをやめられないグロテスクな戦いを続けてこそ、これだけの虐殺に意味が見いだされるのではないか。
わざわざ視点を増やしてまでヒューマンドラマのいい話にする意味がわからない。結局何がしたかったのか。