2009年4月24日金曜日

原点回帰ウォーカーズ

原点回帰ウォーカーズ (MF文庫J)

変な話である。ファウストの直系がようやく市場に出てきた感じ。

ループする物語の中で記号化される主人公たちが記号化された死を繰り返し、運命に抗おうとする話。
虚構に虚構を塗り重ねたところでいったい何を生み出すか、というところが重要になってくるのだと思うし、実際最初の章ではまさしく記号を逆手にとった描写が非常に良くできていたと思う。
だが、読み進むにつれて主人公のモチベーションと読者の希望がどんどん乖離していくのはなんとも。繰り返される死という記号は、物語が進むにつれて悲劇としての説得力を失っていく。
通常のループ物の場合、メタ視点を獲得するのが主人公のみで、その孤独が読者の共感を得るきっかけであったりするのだが、この小説においては登場人物の多くがメタ視点を獲得するため、さらに共感を得ることが難しい。いっそ開き直ってしまえばいいと自分は思うのだが、しかし最後に迫る運命をひっくり返すのは、あくまでも愛なのである。うーむ。

虚構と虚構を塗り重ねた世界の中、それでも輝く愛こそが運命をはねのけることができる……という筋書きだったのかもしれないが、構造的に問題がある印象。

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