2009年3月11日水曜日

これはゾンビですか?1 はい、魔装少女です

これはゾンビですか?1  はい、魔装少女です (富士見ファンタジア文庫)

ゾンビに魂はあるのか?

「自分を殺した人間がいる」「だから復讐する」というのはあくまでも外的な動機付けでしかない。
彼はなぜ自分を殺した何者かを捜し、復讐しようとしたのか? それはすなわち、「彼はなぜ殺されてはならなかったのか?」という問いでもある。ゾンビになったことで、彼の将来のどんな可能性が消されてしまったのか? 主人公はどんな内的な動機から、犯人を憎むに至ったのか? そもそもゾンビとなった主人公は、本当に犯人を憎んでいるのか?

結論から言ってしまえば、おそらくゾンビに魂はなかった。内的な動機はなかった。ただ外的な要請だけが、彼を殺人者への復讐へと駆り立てていた。なぜならゾンビになって悪いことなんて、陽に当たるのがつらいってこと以外、ひとつもないのだから。
だが、物語の途中でゾンビは疑似家族を得る。彼女たちとのふれあいによりゾンビ獲得したものこそ内的な動機であり、主人公の魂だ。「彼女たちを守りたい」という殺人者への怒りが示されてから初めて、彼の復讐劇に読者は共感するのだ。作者はそんなこと意図していないのだろうけど。

作品自体に傷は多い。それぞれの特殊能力を印象づけ、あれだけの短期間でたたみかけるように新たな敵を投入するのは非常に過剰で良いのだが、特に後半、インフレーションする能力を作者が捌き切れていない。前半の肉体限界パーセンテージ的な物差しがあると楽なんだろうけれども、異なる種族の間ですぐに用意するのは難しいかもしれない。以降の展開で力関係を描くのに苦労しそうだ。

ギャグ要素は決して悪くないのでそっちの方もこのままがんばってほしい。だがまあこれは作品内容とは全然関係ないのだけど、ネルリの前に読むんだったなあ、とは思う。あと逆さ読み呪文といったら『ゴクドーくん漫遊記』だよなあ、とも思う。

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