読み物としては良くできている。次から次へと細い線がつながっていく展開は白眉だが、導入などに見られる細かな演出も非常に良くできていて、作品の端々ではっとさせられる。
残念なのは、作品の立ち位置が間違っているように感じられたところ。ライトノベルらしい求心力をもつキャラクターを中心に置かなかったのは作品としての判断だからある意味問題ない。世界がパラレル化してしまったことに何ら説明を裂かなかったのは、ああいう導入にした以上読者の興味がそこに焦点を結ばざるを得なくオチに肩すかしの感を与えるのと、平行世界への「メール云々」の疑問がやけに作為的に感じてしまうことを除けば、まあ許容範囲内だと感じた。
だが、「主人公の恋心」に対する決着の付け方は、あまりにあっけなさ過ぎる。この作品においてもっとも重要なテーマとなるのは、「主人公が死別した恋人への思いをどう処理するか」の一点であり、間違っても学園を巻き込んだ犯罪ではない。事件の解決と勧善懲悪なんて副次的な結果に過ぎないのであり、外的なストーリーの展開とともに、行き場をなくした主人公の恋心という内的なストーリーが、何かしらのカタルシスを得るべきだったのだと思う。その意味で、あのラストの唐突な別れはないんじゃないかなあ。
なんとなく流れで墓参りに行くようなラストじゃなくて、まあベタだけど、ラストで涙を拭って笑顔で歩き出して、でも読んでるオレたち号泣……みたいなオチになるべきだと思った。
2009年3月7日土曜日
パララバ―Parallel lovers
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